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障害者IT利活用支援 障害別セミナー「肢体不自由」

開催後報告

令和2年10月22日(木)に、障害者IT利活用支援 障害別セミナー「肢体不自由」を開催しました。
今年度は新型コロナウイルス感染予防対策として、Zoomによるオンラインセミナーとなりましたが、

事業所職員の方やボランティア活動をされている方、当事者ご家族など多くの方にご参加いただきました。

【第1部】障害者 IT 支援を行っていく上で、必要となる技術知識を学ぶ

◆ 肢体不自由の人にとって便利なアクセシビティ機能やアプリ

  講師名 : 松本 知仁 様
  ご所属 : 特定非営利活動法人 神奈川県障害者自立生活支援センター(キルク)
※ 上記センターでは、ピア・カウンセリング、各種情報提供、介助者の養成などを行い、障害当事者の立場から自立生活を総合的に支援されています。そして、当事業のIT利活用の相談窓口、相談対応等を担っていただいております。
【講義内容】
・身体障害についての理解と対応方法
・肢体不自由の方のためのアクセシビリティ機能やアプリ
・Windows、MacOSの操作機器
・iPhoneのAssistiveTouchや音声コントロール方法


~ 感想 ~
肢体不自由の方のためのアプリ紹介として、いくつか身近に使っているアプリもありました。当たり前に使っていると思っているアプリでありながら機能として知らなかったことも多く、大変興味深く学ぶことが出来ました。障害者IT支援を行っていく上で、色々な機能を知っていることも大きな強みになると思います。常に新しいことに興味を持つことも大切だと思いました。

【第2部】最新のIT支援技術や応用の仕方などを実例をもとに理解する

① シンプルテクノロジーを活用した支援の実際(マジカルトイボックスの活動を中心に)

  講師名 : 金森 克浩 先生
  ご所属 : 学校法人 日本福祉大学 スポーツ科学部
  専門分野: 特別支援工学、教育工学
        ICT機器をはじめとした支援機器・支援技術の活用に長く取り組まれています。

【講義内容】
・AAC※1の3つのスタイル

・シンプルテクノロジー※2とは
・ICT時代にあえてICT以外を使う意味
・コミュニケーション支援のため大切にすること


※1  Augmentative and Alternative Communication(拡大・代替コミュニケーション)
※2 電子情報機器などの高度な機能のあるものではなく単機能で、操作した入力と結果の出力の関係が分かりやすいもの。

例:重度障害児が身近な道具を利用して「バナナジュース作り」を行う
 1.バナナをむく    → 洗濯ばさみで皮を挟んで引っ張る
 2.バナナを小さく切る → 針金でバナナを切る
 3.ジューサーに入れる → ハンガーを使った装置で投入
 4.牛乳を注ぐ     → ハンガーを使った装置で投入
 5.ジューサーを動かす → 電源リモコンでジューサーを操作
 6.コップに注ぐ。   → ハンガーを使った装置で注ぐ
材料を切って、作って、飲むまでの過程を体験させることで、ただ飲むだけの行為も楽しみに変わることを知ってもらうことが目的

~ 感想 ~
金森先生が活動されている内容を含めながら、どんなことにも楽しむこと、出来ないという先入観ではなく「チャレンジしてみよう」という意欲を持ってもらう工夫などについて学びました。子どもたちの生活が豊かになることを大前提として、シンプルテクノロジーは、使う人によって生かされる場合もつまらないものになってしまう場合もある。そのためには豊かな発想を生み出してもらいたいという思いが伝わってきました。

② ICT を活用した支援(スイッチや視線入力について)

  講師名 :伊藤 史人先生
  ご所属 :国立大学法人 島根大学 総合理工学部 機械・電気電子工学科
  専門分野:リハビリテーション科学・福祉工学
       重度障害者のICTを使ったコミュニケーション支援技術の研究や普及活動をされています。
今回の講演でもお話しいただいた視線入力訓練アプリ「EyeMoT」の開発を行い、車いすで走行した道をシェアするアプリ「WheeLog! -ウィーログ-」の最高技術責任者でもあります。
【講義内容】
・超・重度障害者のまったく参考にならないテクノロジー応用事例について
・技術の限界≠当事者の限界
・視線入力訓練アプリ「EyeMoT」


~ 感想 ~
「超・重度障害者のまったく参考にならないテクノロジー応用事例について」というタイトルに驚かされましたが、内容を見て全くその通りだと感じました。肢体不自由・聴覚障害・視覚障害の重度重複障害者である紗貴さんが、パソコンやタブレットなど複数台の機器を駆使して、大学の授業や教員試験(現在は教師です)に挑む姿には衝撃と感動を覚えました。テクノロジーは今後もますます進化していきますが、テクノロジーをどのように使いこなすかが使う側に求められています。使いこなす側も「わからない・できない」という前提ではなく、「わかっている・できる」という前提で取り組むことが大切で、視線入力装置・スイッチなどを使う当事者の「カラダ」を知って活用すべきということを考えさせられる内容でした。
★視線入力訓練アプリ「EyeMoTEye MoveMent Traning)」って?
視線入力装置は重度障害にとって有効だが導入するのは難しいので、
感覚的にできるゲームを通して成功体験を積むことで視線入力を学ぶことが出来るアプリです。
※視線入力訓練アプリの導入にあたっては、15インチ以上の画面が必要です。視線の追従機能は、画面が小さいと難しいからです。

※【第2部】の金森先生、伊藤先生の講義資料質問の回答は、以下、各先生のホームページにて公開されています。※


●日本福祉大学 金森先生 「kintaのブログANNEX」  https://www.assistivetechnology.cfbx.jp/kinta/
             「マジカルトイボックス」  https://magicaltoybox.org/mtb/

● 島根大学 伊藤先生「ポランの広場」  https://www.poran.net/ito/

 EyeMoTのマニュアル  https://www.poran.net/ito/download/moriokatonan_202005
 https://www.poran.net/ito/download/okayama_eyemot_manual_202005
 視線入力環境導入の参考ドキュメント  https://www.poran.net/ito/download/hagemi_20180607
 その他参考資料  https://www.poran.net/ito/download

WheeLog!  -ウィーログ- https://shien-network.kanafuku.jp/use/apps/1376.html

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