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テクノツール株式会社

神奈川県内で創業 障がい者支援機器の開発・販売企業

テクノツール株式会社は、川崎市多摩区で創業した企業です。
「アシスティブテクノロジーを道具として社会に貢献する」という経営理念のもとに、障がい者を⽀援する機器の開発、輸⼊、販売を⼿掛けています。

今回は、⾃社開発製品「クリックアシスト」のことを中⼼に、島⽥真太郎取締役にお話を伺いました。
 

島⽥ 真太郎 取締役 顔写真
テクノツール株式会社 経営企画部 島⽥ 真太郎 取締役

まず御社についてご紹介をお願いします。

当社は1994年に会社を設⽴しました。設⽴当初から障がい者を⽀援する機器を開発・販売しています。

現在は海外からの輸⼊品の販売も⼿掛けており、⾃社製品と輸⼊品の取扱⽐率は半々くらいです。
海外の製品の⽅が利⽤者に役⽴つ場合もありますし、テクノツールの製品と組み合わせて使ってもらうことでより便利になることもあるので、 輸⼊品の販売もするようになりました。
輸⼊する製品は、⾃分で海外の展⽰会を回って仕⼊れることもありますが、もともと取引のあるフィンランドの企業QUHAさんなどから紹介を受けて販売が決まることもあります。
 

⾃社製品はどのように開発しているのでしょうか︖

現在は社員8名で、そのうち技術者は4名です。
機械⼯学のエンジニアとソフトウェアのエンジニアが、協⼒企業と⼀緒に開発を⾏っています。
定期的な採⽤活動はしていませんが、もし募集をするときは、ツテを頼ったりして探します。
 

営業活動はどのように⾏っているのでしょうか︖

展⽰会に⾜を運ぶのが有効かと思っています。
障がい者をターゲットにしているのでマーケットが⼩さく、⼀般的な営業⽅法では効率が悪いためです。
営業マンも専任として担当しているのは⼀⼈ですので、幅広くまわることはできません。
作業療法⼠の⽅が集まる学会などにも積極的に顔を出して、知ってもらったり、使ってもらったり、ということから始めています。
 

⾃社開発製品「クリックアシスト」について

クリックアシストとは、どのような製品なのでしょうか︖

クリックアシスト画像

(画像をクリックすると商品紹介ページに遷移します)

クリックアシストは、マウスポインターは動かせるけれど、クリックが困難な⽅に向けて開発した⾃社製品です。
ポインターの動きを⼀定時間⽌めることで、様々なアクションを可能にしています。
 

クリックアシスト開発までの経緯や、開発秘話をお聞かせください。

開発することになったきっかけは、当社で取り扱っているZONOという商品をもっと幅広く使っていただけるようにしたい、という思いです。
ZONOは耳の横など身体に装着して使う、フィンランド製のワイヤレスマウスです。手の不自由な方でもカーソル操作ができる、とても便利なものです。
しかし、カーソルでポインティングができても、クリック、右クリックなどの操作が難しい⽅がいます。ZONOに限らず、カーソルを動かす⼿段はあっても、クリックするには別の動きが必要になるためです。

そこで、クリック操作が難しい⽅がIT機器を使⽤する⼿段を増やせないか、というアイディアから開発に着手しました。

開発には企画からリリースまで1年くらいかかりました。リリース後も少しずつバージョンアップをしています。
このソフトは2名のエンジニアがチームになって開発したのですが、そのうち1名は在宅勤務で、脳性まひによる肢体不⾃由のエンジニアです。開発者⾃⾝が肢体不⾃由の障がいを持つ当事者ということで、マウス系の選択肢を増やしたい、という思いがあったように思います。
開発者に障がいの当事者がいるのは当社の強みです。これからもっとその強みを活かしていきたいと思っています。

クリックアシストの発売後の反響や売れ⾏きはいかがでしたか︖

これまであまりなかったタイプの製品なので喜ばれています。
個⼈のお客様は、筋ジストロフィーの⽅、脳性⿇痺の⽅が多いのかな、と感じています。

またこの製品は、無料版をダウンロードしてお試しいただけるのですが、ある特別⽀援学校ではすべてのPCに⼊れた、という嬉しい話も聞いています。
学校で試してみて気に⼊ったらご⾃宅で購⼊、という流れができるのはありがたいことです。

今後の展望

御社の今後の事業展開の予定について、お聞かせいただけますか。

先ほどお話したクリックアシストについて⾔えば、バージョンアップの予定があります。
無料版も含めて機能を⾒直して、より良いものにしていきたいと思っています。
さらに海外進出の計画があります。その場合はマニュアルの翻訳なども必要になりますが、海外の提携先に⼿伝ってもらったりして対応する予定です。

ジョイスティックマウス テスト

ジョイスティックマウス操作テスト

他にはゲームアクセシビリティにも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
健常者だけでなく、障がいがある⽅にとっても、楽しむ、ということは、とても⼤切です。「楽しい」ことを重視したいし、社会全体でも重要視されても良いと思っています。
⾛り回ってサッカーをする、など、体を動かしてスポーツをすることができない障がいのある⽅もいらっしゃるので、ゲームというのは貴重な娯楽になる可能性があります。当社はそこに注⽬しています。

当社にはジョイスティックマウスという製品があります。
⼿の不⾃由な⽅でも使えるマウスには、粗⼤運動向きのもの、例えばボールを転がしたりする⼤きな動きで操作するものはそれなりに種類 があります。しかし、⼩さな動き・微細な動きで操作するマウスは選択肢が少ないのです。
このジョイスティックマウスは、あごや⼿⾜の指先などの弱い⼒や⼩さな動きで操作できるようになっていますが、北海道のある病院では、このジョイスティックマウスを改造して、ゲームができるようにしたと聞いています。
最近ブームのeスポーツですが、アメリカでは障がいのあるプロプレイヤーがいたりします。障がい者の活躍の場が広がることが期待できますので、ゲームには⼤きなポテンシャルを感じているところです。当社としてもゲームアクセシビリティには積極的に取り組んでいきた いと考えています。
 

お話を伺って

お話を伺っていて、常にユーザーのことを考えながら、誠実に企画、開発、販売されている企業姿勢を強く感じました。
テクノロジーが進化し、これまでの障がい者の⽅だったら諦めてきたことでも、実現できる時代になっています。
そのサポートをするテクノツール株式会社の今後の発展が楽しみです。
 

取材先

テクノツール株式会社 稲城事業所

 

事業内容

  • 福祉機器の開発、輸⼊、販売
  • コンピュータシステム開発
  • ロボットアームの開発、輸⼊、販売

Webサイト

https://www.ttools.co.jp/

取材

2019年7月

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