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障害者支援を行っている神奈川工科大学へのインタビュー(第2回)

厚木市の自然豊かな環境にキャンパスを置く神奈川工科大学は、2013年に開校50周年を迎えた長い歴史のある大学です。

2015年4月には新たに「看護学部看護学科」と「工学部臨床工学科」を開設するなど、福祉の振興に貢献する様々な取り組みを行っています。

今回は、福祉分野のロボット開発に取り組んでいる、創造工学部ロボット・メカトロニクス学科の河原崎教授にお話をお伺いしてきました。

インタビューに答える河原崎教授
創造工学部ロボット・メカトロニクス学科 河原崎 徳之 教授
河原崎教授のプロフィールはこちら
http://www.rm.kanagawa-it.ac.jp/~kawaralab/kawaraprof.html

様々な支援機器を研究されていらっしゃいますが、直接、障害を持った方から要望を受けて開発するケースもあるのですか?

【視覚障害者のための電子指揮棒】

近畿大学工業高等専門学校 浅川貴史氏、 株式会社アサップシステム との共同研究
電子指揮棒の外観 振動するリストバンドの外観

はい、あります。視覚障害者を支援する「神奈川県ライトセンター」という施設がありますが、ここで視覚障害者のコーラスグループが活動しています。 この団体から、演奏の際に「指揮者の意図を演奏者に無音で伝えることはできないか」という要望がありました。

一般的に視覚障害者が楽器を演奏する際は、隣に補助者が寄り添い、肩を触ったりすることによって指揮者の合図を報せています。

我々は民間企業や他校の研究者と共同でこのテーマについて研究し、「視覚障害者のための電子指揮棒」を開発しました。

この装置は、演奏者が振動するリストバンドを装着することによって、電子指揮棒の動きを振動の強弱で細かに伝えるものになります。現在、研究機関や大学の研究向けとして販売しています。

将来的には、キネクトなどの外部センサーを活用し、指揮者が「向いている方向」なども伝えられるようにしたいと考えています。

視覚障害者のための電子指揮棒
http://www.asap-sys.co.jp/baton.html

(株式会社アサップシステム)

河原崎教授が現在の研究分野に進まれたきっかけを教えてください

インタビューに答える河原崎教授

私は大学時代、情報工学科を専攻して学んでおり、そこで初めてロボットの研究を知りました。当時はモーターとチェーンで動くとても単純なものだったのですが、その時にとても「面白い」と感じたことを覚えています。

私が大学生活を送っていた1980年代は、「日本ロボット学会」が発足し、日本においてロボット研究が本格的に動き出した時期でもあります。これに合わせるように私もロボット研究の道へ進みました。

ロボットが様々な障害物を回避して、目的物に到達する「経路生成」などを主な研究テーマとしてきましたが、2000年頃になると、それまでの要素技術から、実際の「人の暮らしに役立つ」ことを目的とした応用技術の研究が注目され始めました。

神奈川工科大学では2000年に「福祉システム工学科」が新設され、私はここで教鞭を取るようになり、高齢者や障害者の支援を目的とした、人と共存するロボットの研究・開発に取り組んでいます。

今後、どのようなことに取り組んでいく予定ですか

製作途中の電動カートの外観

神奈川工科大学が位置する厚木市は「さがみロボット産業特区」に指定されており、ロボットによる「高齢者の外出支援」を目的の一つに掲げています。

先日、近隣の住民から本学に要望が寄せられました。この方は高齢のため足が不自由になり、日常の外出移動に大変困っているご様子でした。

お話のなかで、自宅近くの坂を登る際、畑仕事で使う「耕運機」に掴まって歩いているというエピソードがきっかけとなり、外出を支援する電動カートの開発に取り組んでいます。

屋外や大きな施設などで、人が掴まって歩くことができたり、あるいは荷物を運搬してくれたりなど、様々な人の移動を支援できるようになればと考えています。

製作中のロボットをテストする学生

また、様々な団体が開発したロボットが出場し、その性能を競い合う「ロボカップ」という競技会があります。

この競技の特徴は、ラジコンのような人の操作によって動くロボットではなく、ロボット自身が考えて動く「自立移動型ロボット」による競技会という点です。

このなかに「アットホームリーグ」という種目があります。人が暮らす家の中を想定した会場で、複数の人の要望をロボットに伝え、的確な対応ができるかを競うものです。

例えば、「コーラを取ってきて」という要望に対して、冷蔵庫から適切な目的物を取り出し、必要としている人に渡せるかといったことを競います。

これは、我々が目指す「人の暮らしに役立つロボット開発」の趣旨に適っているため、現在、この競技への出場を目標にロボットの開発に取り組んでいます。

最後に、障害者支援に対する想いをお聞かせください

これから日本が超高齢社会を迎えるにあたって、福祉・介護ロボットの実用化が期待されています。

将来的にロボットが人の家の中に入ってきたときに、まず、人間にとって安全でなければならない。そして、操作に関しても、人と人がコミュニケーションするように、直感的でわかりやすくあるべきだと考えています。

そのような人の暮らしに役立つロボットを開発するため、民間企業との共同研究や、介護施設との協力をよりいっそう進めていきたいと考えます。


取材先
神奈川工科大学 創造工学部 ロボット・メカトロニクス学科
所在地
神奈川県厚木市下荻野1030
Webサイト

http://www.kait.jp/